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ビジネスでサンクコストに陥る10のパターン

サマリー
ビジネスの現場でサンクコストが見えにくくなる10のパターンを解説。大切なのはサンクコストを認識し、その上で判断すること。現状維持も変更も、認識した上での選択なら合理的です。【滞在時間4分】

キーワード
サンクコスト、ビジネス判断、プロジェクト管理、意思決定、組織運営


「ここまでやったんだから、今さらやめられない」

会議でこんな言葉を聞いたことはありませんか?

大切なのは、サンクコストそのものを避けることではありません。サンクコストが存在することに気付き、その上で判断できているかです。

成果の出ない取り組み、効果の見えない施策、機能しない仕組み…。「ここまで時間をかけたから」という理由が、判断の中心になっていないか。もしそうなら、一度立ち止まる価値があるかもしれません。

この記事では、ビジネスシーンでサンクコストが見えにくくなる10のパターンを紹介します。認識した上で、現状維持を選ぶのか、変更を選ぶのか。その判断は、あなた次第です。

📖 サンクコストなぜ止められない?サンクコストの罠と抜け出し方


1. なぜビジネスでサンクコストが見えにくくなるのか

個人の判断とは異なり、チームや組織の意思決定にはサンクコストを認識しづらくする3つの構造があります。

複数の人が関与する

チームの取り組みには、企画した人、実行する人、判断する人など、複数の立場の人が関わります。「始めた人」と「判断する人」が異なることも多く、サンクコストの存在が見えにくくなります。

説明責任が求められる

チームや会社の資源を使っている以上、「なぜ始めたのか」「なぜ変更するのか」の説明が求められます。特に方針転換は、「失敗を認める」と見なされることもあり、サンクコストを直視しづらくなります。

時間軸が長い

チームの取り組みは、数週間から数ヶ月、時には数年の時間軸で動きます。その間に状況は変化しますが、その変化に気付きにくい。日々の業務の中で、サンクコストは徐々に積み重なっていくのです。

この3つの構造が、「過去の投資」を判断の中心に置きやすくします。だからこそ、意識的にサンクコストを認識することが重要です。


2. サンクコストが見えにくくなる10のパターン

ビジネスの現場でありそうな、サンクコストが見えにくくなるパターンを10個紹介します。

これらに当てはまるからといって、必ずしも「変えるべき」というわけではありません。大切なのは、サンクコストの存在に気付くこと。その上で、変更コストも含めて総合的に判断することです。

パターン①:赤字プロジェクトの延命

「すでに数百万円かけている。あともう少し続ければ、何とかなるかもしれない」

成果の出ないプロジェクトに、「ここまでやったから」と追加投資を続けるパターン。損失を確定させたくない心理が働き、結果的に損失が拡大します。

パターン②:売れない商品への固執

「開発に半年かけた。せめてもう少し販売を続けよう」

市場ニーズが見込めない商品を、開発にかけた時間を理由に継続するパターン。在庫コスト、販売の手間、機会損失が積み重なっていきます。

パターン③:適性のない人材への配置継続

「外部研修にも参加させたし、もう少し様子を見よう」

適性や意欲が見られないメンバーに、これまでの育成を理由に配置を続けるパターン。本人にとっても、チームにとっても、良い結果を生まない状況が続きます。

パターン④:機能しないツールの維持

「今までずっと使い続けてきた。今さら変えない方が良い」

現場で活用しにくいツールやシステムを、これまでの使用を理由に維持し続けるパターン。業務の非効率が続き、生産性が低下します。

パターン⑤:効果の出ない施策の継続

「3ヶ月やってきた。来月こそ効果が出るはずだ」

成果の見えないマーケティング施策などを、「ここまで続けたから」と継続するパターン。データを見ず、希望的観測で判断してしまいます。

パターン⑥:採用基準の緩和・妥協

「時間をかけて募集したから、とりあえず誰か採用しないと」

採用活動に時間・コストをかけたことを理由に、本来の基準に満たない人材を採用してしまうパターン。採用後のミスマッチが、さらに大きなコストを生むことになります。

パターン⑦:価値のない定例会議

「この会議はずっと続けている。とりあえず開催しておこう」

目的が不明確な定例会議を、「ずっとやってきたから」という理由で継続するパターン。参加者全員の時間が失われていきます。

パターン⑧:機能しない業務フローの維持

「この手順で長年やってきた。変えると混乱する」

非効率な業務プロセスや手順を、「慣れている」「ずっとやってきた」ことを理由に維持し続けるパターン。日々の非効率が積み重なり、生産性が低下し続けます。

パターン⑨:成果の出ないパートナーシップの継続

「協業して3年になる。これまでの関係を壊すわけにはいかない」

期待した成果が得られない業務提携やパートナーシップを、これまで築いた関係性を理由に継続するパターン。関係構築に費やした時間・労力が判断を鈍らせます。

パターン⑩:不採算拠点・店舗の維持

「開設時に多額の投資をした。簡単には閉められない」

赤字が続く拠点や店舗を、開設時の投資額を理由に維持し続けるパターン。固定費、人件費、機会損失が積み重なっていきます。


3. サンクコストを認識するための3つの取り組み

サンクコストを日常的に認識し、合理的に判断するための実践的な方法を紹介します。

取り組み①:サンクコストを認識する

まず、サンクコストの存在に気付くことが第一歩です。この問いを投げかけてみましょう。

「もし今、何もコストをかけていない状態だとしたら、同じ選択をするか?」

具体的な場面で考えてみます:

  • 定例会議:今日から始めるとしたら、同じ形式・同じ頻度で開催するか?
  • 使いにくいツール:今契約するとしたら、このツールを選ぶか?
  • 新規プロジェクト:今年から始めるとしたら、同じ内容・同じ規模でやるか?
  • 人材配置:今から配置するとしたら、その人にその仕事を任せるか?

過去の投資をいったんゼロにして考える。これが、サンクコストの存在を認識する方法です。

取り組み②:2つの問いで判断する

サンクコストを認識したら、次は判断です。2つの問いを天秤にかけて考えましょう。

問い1:「このまま続けて、価値を生むか?」
過去にどれだけ投資したかではなく、これから先に価値を生むかを基準に考える。

問い2:「変更コストは、どれくらいか?」
変更にかかるコストも現実的に見積もる。その上で、続ける価値と変更コストを天秤にかける。

この2つの問いをチームで投げかけることで、感情ではなく事実に基づいた判断ができます。

取り組み③:仕組みで予防する

合理的な判断を続けるには、仕組み化が重要です。

やめる基準を事前に決める:

新しいプロジェクトや施策を始めるとき、撤退基準や見直し基準を事前に設定しましょう。

  • 「3ヶ月で○○の成果が出なければ見直す」
  • 「参加者が△△を下回ったら中止を検討する」
  • 「月次で効果測定し、2ヶ月連続で基準未達なら方針転換」

定期的に見直す習慣をつくる:

四半期ごと、プロジェクトの節目ごとに、取り組み①②の問いを投げかける習慣をつくりましょう。

感情ではなく、事実で判断できる仕組みをつくる。それが、サンクコストに引きずられない組織文化をつくります。

これら3つの取り組みは、完璧にできなくても構いません。まず1つから始めてみることが大切です。


4. サンクコストを認識した判断のプロセス

以下の図は、サンクコストを認識し、合理的に判断するプロセスを示しています。

flowchart TD
    Start[チームの取り組みを<br/>見直す場面] --> Q1{取り組み①<br/>サンクコストを<br/>認識できているか?}

    Q1 -->|認識できていない| Blind[「ここまでやったから」<br/>という理由で判断]
    Blind --> Risk[サンクコストに<br/>引きずられる可能性]

    Q1 -->|認識できている| Check[立ち止まって考える]
    Check --> Action2[取り組み②<br/>2つの問いで判断する]
    Action2 --> Q2["問い1: このまま続けて<br/>価値を生むか?"]
    Action2 --> Q3["問い2: 変更コストは<br/>どれくらいか?"]

    Q2 --> Compare{天秤にかけて<br/>判断する}
    Q3 --> Compare

    Compare -->|続ける価値 > 変更コスト| Change[変更を選ぶ]
    Compare -->|続ける価値 < 変更コスト| Keep[現状維持を選ぶ]

    Change --> Good[合理的な判断]
    Keep --> Good

    Good --> Action3[取り組み③<br/>仕組みで予防する]

    style Risk fill:#ffcccc,stroke:#cc0000,stroke-width:2px
    style Good fill:#ccffcc,stroke:#00cc00,stroke-width:3px
    style Check fill:#fff9cc,stroke:#ff9900,stroke-width:2px
    style Compare fill:#e6f3ff,stroke:#0066cc,stroke-width:2px
    style Action2 fill:#e6f3ff,stroke:#0066cc,stroke-width:2px
    style Action3 fill:#ccffcc,stroke:#00cc00,stroke-width:2px

この図のポイント

  • 取り組み①(認識):サンクコストの存在に気付くことが、すべての出発点
  • 取り組み②(判断):2つの問いを天秤にかけて、事実に基づいて判断する
  • 取り組み③(予防):合理的な判断を続けるために、仕組みで予防する
  • どちらも合理的:現状維持も変更も、認識した上での判断なら合理的

この3つの取り組みが、図の流れとして整理されています。

認識した上で現状維持を選ぶのも、変更を選ぶのも、どちらも合理的な判断です。


まとめ:サンクコストを認識し、合理的に判断する

ビジネスの現場では、サンクコストは日常的に存在しています。

大切なのは、サンクコストの存在に気付き、それを認識した上で判断することです。

「ここまでやったから」という理由が、判断の中心になっていないか。もしそうなら、一度立ち止まって考えてみる価値があります。

「この先、価値を生むか」「変更コストはどれくらいか」

この両方を天秤にかけて判断する。その結果、現状維持を選ぶこともあれば、変更を選ぶこともある。どちらも、認識した上での選択なら、合理的な判断です。

あなたは、サンクコストを認識できていますか?

サンクコストを見える化すること。それが、より良い意思決定への第一歩です。


学んだこと

  • サンクコストの本質:悪いものではなく、認識できているかが重要
  • 見えにくくなる構造:複数の関与者、説明責任、長い時間軸がサンクコストを見えにくくする
  • 10のパターン:プロジェクト、商品、人材配置、ツール、施策、採用基準、会議、業務フロー、パートナーシップ、拠点
  • 3つの取り組み:①サンクコストを認識する、②2つの問いで判断する、③仕組みで予防する
  • 判断の視点:「この先、価値を生むか」と「変更コストはどれくらいか」の両方を考慮
  • 現状維持も選択肢:サンクコストを認識した上での現状維持は、合理的な判断

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